生活保護シングルマザーへの「働け」圧力

スタッフからのお知らせ・日記

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母と子の息詰まる日常

生活保護で暮らすことは「悪」か?


 生活保護制度の母子世帯は「働けるのに働かずに生活保護に甘える」という見方をされやすい。世帯主である母親の多くは、生活保護で「働ける年齢(稼働年齢)」とされる20〜64歳。「働かない」「働けない」のどちらなのかはともかく、実際に働いておらず、さらに生活態度や子どもの振る舞いに少しでも「ツッコミどころ」があれば、透明な非難の矢が四方八方から飛んでくる中で、日常を送ることになる。


 


 このような背景から、生活保護母子世帯の中には、時に、世帯全員の引きこもり(子どもは不登校)が見られる。


 しかし、住まいに引きこもっていれば少しは安心できるというわけでもない。地域によっては、生活保護ケースワーカーからの「働けないのか」「もう少し稼げないのか」という圧力に晒され続ける。そういう地域では、母親が働くに至れない状況、背景への理解、目配りがなされることはなく、ただ就労を迫られるだけだ。


 


 2017年7月、大阪市・大阪市大が共同で行った行政データ分析の結果が発表された。本連載でも数度にわたり、このデータ分析とその結果について紹介してきた。


 大阪市は長年、生活保護受給者を減少させて受給期間を短期化することを目標に掲げ、数多くの検討や施策を行っている。この行政データ分析でも、「なぜ、受給者数は減らないのか」「入口と出口のどちらに問題があるのか」という検討が行われた。


 


 


「入口」とは生活保護を必要とする事情、「出口」とは生活保護が不要になる状況である。たとえば、深刻な不況で失業者が激増して求人が激減している場合、「入口」にも「出口」にも問題があることになる。


 2017年7月7日、大阪市は2011年と2016年を比較した行政データ分析から、年齢別では22歳以下の子どもの平均受給日数が長いこと、性別では女性の平均受給日数が男性とくらべて顕著に長いこと、22歳以下の子どもと女性の受給日数がこの5年の間に2倍近くに増大していることを示した(大阪市報道発表資料)。


 


 


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吉村洋文(大阪市長)ツイッターより

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 また、大阪市長の吉村洋文氏は、7月10日、「母子家庭の受給期間が伸びる傾向については、子どもの貧困対策チームで有効な就労支援等を検討する」とツイートした。


 しかし、8月25日に開催された大阪市「生活保護適正化連絡会議」では、「子育て世帯における受給期間の課題について」と銘打ち受給期間の長期化を問題としつつも、「要因分析を踏まえて課題整理し、施策の検討や生活保護世帯への働きかけについて関係各局が連携して取り組む」とある。7月の報道資料や市長ツイートとは、かなりトーンが変わっている。


 


 自治体行政は、良くも悪くも変わりにくい。それまでの施策との連続性・継続性は、しばしば「前例主義」と批判される。また法や規定の枠の中での判断の数々は、「お役所仕事」と非難される。しかし、良い意味での「前例主義」や「お役所仕事」は、自治体行政になくてはならないものの1つだ。大阪市は、それらに縛られつつも、緩やかに態度を変えようとしている。引き続き、今後に注目する必要がありそうだ。



http://diamond.jp/articles/-/143047